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第4回特別巡検 まち歩きシリーズ3

門司・下関を歩く ~関門海峡の歴史地理~

【日 時】 2010年7月17日(土)

【案内者】 平岡昭利 礒永和貴 稲田和子 上寺 遼 堀江直矢 本山大智 坪根寛樹 入江朋幸

【参加者】 29名


見学ポイント

門司港レトロ展望室
▲門司港レトロ展望室より門司港を望む

 関門海峡をまたぐ近代の2つの港周辺を歩きます。門司港レトロ地区として近年注目を集めている地区見学の後、船で下関へわたり、下関の歴史地理的な要所を歩いて見学します。鉄道、徒歩、船、路線バスでまわる半日コースです。下関にある大学に勤務の会員で歴史地理がご専門の礒永先生を中心に、平岡昭利先生等にもご協力いただいて実施します。解散後は有志で、下関のコリアンタウンで懇親会を行う予定です(費用は別途)。第5回の特別巡検と連続した開催日になっており、両方参加していただけます。



巡検報告

 2008年11月、2010年2月に続く、徒歩による「まち歩きシリーズ」の3回目として、門司・下関を歩くが実施された。梅雨明けの7月17日(土)午後、JR小倉駅新幹線口に集合の後、JR小倉駅13:42発の普通列車でJR鹿児島本線の起点JR門司港駅へ移動。JR門司港駅13:55到着後、改札口前で野間会長より挨拶と案内者の先生の紹介があり、同駅を起点とした徒歩による巡検が開始された。

 今回の徒歩巡検は、関門海峡を挟んで、門司側は門司港レトロ地区を、下関側は唐戸地区を中心に実施された。

 巡検は、平岡先生よりJR門司港駅及び門司港レトロ地区の説明の後、原先生による門司港駅を背景に集合写真撮影。門司港レトロ展望室(高さ103m)に移動し、関門海峡を一望する。展望室で一時解散し、各自門司港レトロ地区の旧門司税関、旧大阪商船ビル、九州鉄道記念館等を見学し、15:40にJR門司港駅に再集合する。直ちに「マリンゲートもじ」へ移動し、門司港桟橋15:50発の関門汽船に乗船。関門海峡を船で渡り対岸の下関に向かう。

カモンワーフ
▲カモンワーフにて礒永先生の説明を聞く

 唐戸桟橋着後、磯永先生を先頭に東亜大学学生さんのサポートを伴い、南部郵便局、秋田商会ビル、旧イギリス領事館前、下関市立大学サテライトハウス前、亀山八幡宮前、印接寺門前、李鴻章道、日清講和記念館、安徳天皇阿弥陀寺陵、赤間神宮、朝鮮通信使上陸の地、唐戸市場前、カモンワーフといった順序で唐戸地区を巡検する。カモンワーフ到着後、巡検に同行していただいた東亜大学の学生さんとお別れ、ご苦労様でした。17:50唐戸桟橋前で再集合を確認し一時解散する。唐戸桟橋18:00発の関門汽船に乗船し、再び海峡を渡り門司に向かう。18:05門司港桟橋到着、「マリンゲートもじ」にて野間会長の挨拶の後解散となり、3回目のまち歩きは無事に終了した。

 解散後、希望者による懇親会が実施された。なお、懇親会会場に向かう途中、平岡先生による門司港の路地裏巡検が実施され、港町の細い路地裏を通り会場に到着。また、2名の先生は「マリンゲートもじ」より人力車にて直接、懇親会場へ向かわれた。

 今回の巡検は関門海峡の地域のなかでも、門司港レトロ地区と下関の唐戸地区という限られた地域の巡検であるため、関門海峡全体のことはわからない。「まち歩き」をキーワードとして、海峡を挟んで巡検した両地区からえた印象は、簡単にいえば、門司港レトロ地区はどことなくテーマパークなかを歩いているような印象受けた。一方、唐戸地区は、一般住民が住んでおられる住居に隣接して見学地があるため、違和感はなかった。時間帯で受けた印象として、土曜日の夕方の18:00前後に下関・門司の両地区の様子は、下関側の方が賑わっていたようにおもえた。門司港側は昼の観光客が去り人通りも少なく、昼の様相とは違っていた。

 この違いを生み出している要因は、集客装置と地元住民のかかわり方にあると思われる。唐戸地区には、大型の集客装置として下関市立水族館の「海響館」があり、市民の台所機能もつ下関市地方卸売市場・唐戸市場が存在しており、市民生活とかけ離れた地区ではない。

 一方、門司港レトロ地区は、市民生活と直接関わりがある施設がJR門司港駅だけである。門司港レトロ地区は市民生活の場から遊離した特別の場所、一種のテーマパークのようになり、観光客と地元住民を分断してしまっているようにみえる。門司レトロ地区をテーマパークとしてみれば、「レトロ」の文言だけではいつかは飽きられてしまうであろう。そして日本のテーマパークは時間が経過するとともに廃れていく傾向がある。他のテーマパークようにならないよう、地元住民との結びつきを考えねば、持続ある門司港レトロ地区にはならないのではないかと思われる。門司港レトロ地区の今後の推移に注目してみたい。

 関門海峡は歴史に恵まれた地域であることは周知のことである。この歴史遺産をもとに観光客を増加させるためには、海峡にかかわる各地区が特色をだし、関門海峡の門司地区、関門海峡の唐戸地区というように、関門海峡を全面に押し出して、関門海峡をさらに強調することも重要ではないかと考える。また、観光客だけの海峡交流ではなく、地元住民の日常生活における海峡交流を促進することも必要なことと思われる。

【記録:東出修一】