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【リレーエッセイ13】


フランス ブルターニュ地方を訪ねて

東出加奈子(奈良女子大学博士研究員)


 ニューFHGでは、毎年夏に海外フィールドワークを企画し多くの会員が参加している。筆者が研究対象としているヨーロッパも何度か訪れている。例えばイギリス、スペイン、ポルトガル、ドイツ、スイス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグ、ノルウエー、フィンランド、スウェーデンなどに行っている。個人ではなかなか訪れることが出来ない地域にも行くことができるので、可能な限り参加したいと思っているが、近年は筆者が研究対象にしているフランスに赴くことが多い。本エッセイでは、これまでニューFHGが訪れたことのない、フランス西部のブルターニュ地方を取り上げ紹介したいと思う。このブルターニュに私の知人が住んでいることもあり、パリでの資料収集の合間にたびたび訪れるお気に入りの地方である。


1.フランスのブルターニュ地方

France TGV路線図
▲France TGV路線図www.railfaneurope.net/tgv/より

 ブルターニュ地方は、フランスの西部に飛び出ている半島の地域であり、イル=エ=ヴィレンヌ県、コート=ダルモール県、モルビアン県、フェニステール県の4つの県からなる。北の英仏海峡と南のビスケー湾に面しており、海岸地帯が広がり、さらに沖合にはいくつかの島があり、フランスにおいてケルト民族の特有の文化を持つ地域である。夏は太陽がそそぎ、冬は厳しい寒さで風も冷たく、変化が激しい気候である。とりわけ夏には海岸を求めて人びとがヴァカンスにやってくる。パリ在住者が別荘として所持している人も多く、週末や夏に利用している家も見られる。
 フランスの首都パリから、TGV(フランス新幹線)が各地方に向けて出発しており、そのひとつに西部に向かう鉄道路線がある。パリのモンパルナス駅から出発して約2時間もすればレンヌ駅に到着する。
 レンヌからさらに西のブルターニュ半島には、鉄道で北沿いと南沿いに分かれるのだが、北に向かうと、昨今日本人も観光で多くの人が訪れるノルマンディー地方のモン・サン・ミッシェルがある。列車で行く場合は、レンヌ経由でアクセスする経路になる。筆者もモン・サン・ミッシェル何度か訪れているが、夏は観光客が多く、混雑でなかなか進むことができないこともあることもあり、最近はもっぱらサン・マロに行くことが多い。サン・マロは、大戦によって破壊された城塞を復元し、城壁で囲まれた旧市街地にはホテルやレストランが多く、観光客で大変にぎわう地である。城壁の入り口には、サン・マロの歴史民族博物館があり、中世から17世紀ごろの船や石像などを見ることができる。博物館から城壁に出ると周囲をぐるっと散歩できるようになっていて、周辺の海や当時の大砲を見ながら1周することができる。ゆっくり歩くと1時間くらいかかるかもしれない。イギリスへ向かう大きな客船が停泊していたり、個人のヨットも多く、海を眺めているだけで時間がすぐ経ってしまう。サン・マロからバスを利用すると1時間ほどでモン・サン・ミッシェルに行けるので、ぜひフィールドワークに立ち寄っていただきたい街である。


2.レンヌ

 レンヌは、イル=エ=ヴィレンヌ県の県庁所在地で、ブルターニュ地方の高等法院(パルルマン)が位置する都市である。仙台とレンヌが姉妹都市ということもあり、東日本大震災のときは、レンヌ市役所広場で義援金が多く集められ、仙台に送られている。
 TGVでレンヌ駅に着くと地下鉄に乗り換え3駅ほど行くと、市役所広場近くには伝統的な建築物がある旧市街地が広がる。レンヌの街を南北に通る地下鉄は2002年に建設され市民の重要な交通路となっているが、旧市街で交差する東西に延びる2本目の地下鉄建設が進められている。

写真1 レンヌ市街地
▲写真1 レンヌ市街地(筆者撮影)

 写真1は、レンヌ旧市街地の建築物である。そして、この近くでは毎週土曜日にフランス第2の規模を誇る朝市が出て多くの人が買い物にやってくる。肉や野菜ももちろんだが、ブルターニュならではの海の幸(Fruits de mer)もあり、魚や甲殻類、貝など多くの種類を見ることができる。








 写真2・3は、朝市の様子である。Kg単位で売られていて必要な分だけ量り売りしてくれ、安くて美味しい食料が多く、ついつい買い過ぎてしまう。

写真3 レンヌ朝市2
▲写真3 レンヌ朝市2(筆者撮影)
写真2 レンヌ朝市1
▲写真2 レンヌ朝市1(筆者撮影)













3.ブルターニュ地方の食文化

 ブルターニュ産の牡蠣、オマール海老、ほたて貝、ムール貝などは、フランスにおいても最高級のブランドである。新鮮な海の幸はブルターニュに行けば必ず食べておきたいものである。海の幸以外でブルターニュの食文化と言えば、ガレットとシードルである。食事として、ハムや卵入りのそば粉のガレットをメインにシードルとともに食したあと、デザートで甘いクリームや果物をトッピングしたクレープをいただくのが一般的である。シードルはりんごの発泡酒で、ビールよりも甘い感じがするのでガレットによくあうが、ビール好きな人には、苦みが少なく感じるかもしれない。

 写真4~6は、レンヌ市内のレストランでいただいたガレットとシードルである。レンヌをはじめ、ブルターニュ地方には、クレープ専門のレストランが多くあるので、本場のガレットをぜひ召し上がっていただきたい。

写真6 クレープ
▲写真6 クレープ(筆者撮影)
写真5 シードル
▲写真5 シードル(筆者撮影)
写真4 ガレット
▲写真4 ガレット(筆者撮影)











 ブルターニュ地方をはじめ、首都パリ以外の地方はそれぞれ独自の文化を持っていることからも、地方のフィールドワークに出かけるようにしている。皆さんに、ブルターニュ地方にぜひ訪れていただきたいとお薦めしたい。