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第19回巡検

晩秋の東播磨を訪ねて

【日 時】 1998年11月29日(日) 巡検ルート地図(別窓で開きます)

【案内者】 山田 誠 上田洋行 辰己 勝 小泉邦彦 関口靖之 山田 潔 宝谷亮介 山近博義 小橋拓司 片岡正光

【参加者】 72名


天満大池
▲天満大池

 今回の巡検は、日ごろあまり訪れる機会の多くない兵庫県東播磨地域を選んで、コースを組み立ててみました。

 山陽新幹線と山陽本線の交差する西明石駅に集合し、山陽本線土山駅付近を経て印南野台地に入ります。ここは江戸時代になって新田開発が活発に行われた所で、今日でも多くのため池が見られます。それらは歴史的景観であると同時に、農水省主導の大規模な潅漑用水確保のための事業によって、ため池の大規模化が図られているという点で、すぐれて現代的な景観でもあります。

 次の下車地点は小野市の中心部にある伝統産業会館です。小野は、ソロバンの町として有名ですが、何分80余名のメンバーとあっては、残念ながら家内工業的な実際の工場を見学することは不可能で、会館で映画等によって見ていただくことしかできません。伝統産業会館では、昼食と総会も予定しています。

大門の加古川港跡
▲大門の加古川港跡

 午後はまず加古川に沿う社町大門地区で下車します。ここは、かつて加古川水運が盛んに行われていた当時、水運と陸運の積み替え点として利用された所です。大門地区に続いては、さらに加古川に沿って北上し、滝野町上滝野地区の闘竜灘を見学します。闘竜灘は加古川の河床に岩盤が露出して急流をなしており、かつて明治期に陸軍工兵部隊によって水運用に岩盤の爆破工事が行われたこともありますが、ほどなく川沿いに鉄道(現在の加古川線)が建設されることになり、爆破工事は中止されました。今日では急流を遡上するアユを釣る人々なども多く、ちょっとした観光地になっています。

 滝野町から小野工業団地経由で三木市を訪れます。ここも伝統産業(金物)の盛んなところで、金物資料館を見学します。この資料館は戦国時代の三木城(秀吉が1年余りにわたって兵糧攻めを行い、結局城主の別所氏を滅ぼした所)の跡地に建てられており、城跡からは三木の市街地を一望できます。

 三木市域にはこのような伝統産業ばかりでなく、新しい工業団地や住宅団地も見られ、京阪神大都市圏の一部としての性格もしだいに強まってきました。今回は残念ながら、そうした性格の地区を十分見学することができません。むしろ、旧市街地の商店街が活気を失っている様子を見ることができそうです。

 三木からは、神戸市との境界付近にある呑吐ダムの横を通って帰途につきます。時間に余裕があれば、今ダム湖の湖底部分になっている所に建てられていた、室町時代にまでさかのぼるといわれる民家「箱木千年家(国指定重要文化財)」も見学する予定です。

 都市化の進む神戸市北区から長いトンネルを抜け、三宮で解散しますが、恒例により、その後、懇親会を行います。

 このように、新旧大変バラエティに富んだコースです。多数の会員の方々の参加をお待ちしています。

【山田 誠】


巡検報告

09:50 JR西明石駅集合。山田会長の挨拶と案内者の紹介の後、2台のバスに分乗して出発。 国道2号線を西に向かう。木下先生より古代山陽道の駅家と想定される長坂寺の遺跡やため池に残る山陽道の名残について説明がある。
10:35 天満大池下車。675年にできたことや江戸時代の印南野台地の開発、江戸時代後期よりため池の連結などが行なわれ、その後潅漑水路が整備されたことについて小橋先生より説明を聞く。加古川と河岸段丘の形成について前田先生から、天満大池の675年成立の可能性と古代山陽道が踏襲された西国街道と条里の関係について木下先生から説明を聞く。
11:15 加古大池の横を通過。山田潔先生より明治18年の害虫被害後すぐ廃絶したまぼろしの播州葡萄園について、小泉先生より戦時中飛行場があったことなど説明あり。
11:30 神戸電鉄のガードをくぐり一柳氏一万石の陣屋町小野に入り、小野市伝統産業会館着。研修室で職員の方から原木は樺の木など昭和51年に伝統工芸品に指定された算盤について説明を聞き、映画を見る。
12:05 同じ研修室で総会、昼食。山田会長より来年度の北欧海外巡検コース案、次回巡検福井の予定などの説明あり。ミャンマー巡検の文集が配布される。
13:15 伝統産業会館出発。社(やしろ)サイエンスパークを見ながら大門へ。
13:35 大門の加古川港跡で下車。小泉先生より高瀬舟の荷おろし場と水陸交通の中継点として発達した大門について、小橋先生より河床に露出している神戸層群の岩盤について説明あり。また、宝谷先生より高砂からの上りは6名位で高瀬舟を引いていたらしいとの説明あり。
14:05 闘竜灘下車、岩盤の上で全体写真撮影。山田潔先生より日本一鮎の解禁が早いこと、小橋先生より白亜紀の凝灰岩のこと、小泉先生より川船の荷下ろしと積み替えの場で、フットワーク発祥の地であることなど説明を受ける。
14:35 三木に向かって出発。175号線旧道で、社の町を通過、関口先生より中心になる佐保神社の指摘あり。小泉先生より社町、兵庫教育大学について、山近先生より浄土寺について車中説明あり。
15:05 車中より小野工業団地、流通業務用地を見学。三木・小野インターチェンジに直結して、流通面が充実していることなど車中説明あり。
15:27 三木市中央公民館で下車。商店街を歩いて三木城跡に行き、2組に分かれて三木城下町と金物資料館を見学。城下町が見下ろせる城跡から商店街のさびれ、秀吉の攻撃と地形、水運などについて小橋先生の説明を聞く。19世紀のはじめ高瀬舟を介した水運で江戸とも鋸・庖丁など金物の取引が始まったことも聞く。資料館では中世に三木鍛冶の興隆があり、近世に堺との商業的な争いに何度も敗れていることなど説明を受ける。
16:30 三木を出発。橋本先生から三木市や志染中学について、森田先生から丘陵地のゴルフ場についての車中説明あり。
16:50 山近先生より時間の都合で下車できない箱木千年家についての説明。
17:05 長さ7.7kmの新神戸トンネルについて、小泉先生より説明あり。辰己先生より巡検の総括。
17:25 三ノ宮駅前着、第一次解散、懇親会へ。