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野外歴史地理学研究会の刊行物紹介

シネマ世界めぐり

シネマ世界めぐり




A5判、235頁、本体2,400円(税別)

野外歴史地理学研究会、2008年発行

ISBN978-4-7795-0311-5


 野外歴史地理学研究会の編集による出版物の第2弾が刊行されました。山田誠元会長を筆頭に研究会のメンバー31名が執筆者です。日頃、野外にでて、ひとあじちがう国内外の野外探訪を中心とした当研究会ですが、今回は映画についての一般向け読み物を刊行しました。一見と映画と歴史地理はあまり関係がないように思えますが、日頃のわれわれのフィールドワークの成果を随所にとりいれることを心がけました。52本の映画の舞台のほとんどは執筆者や研究会に関連する人々が実際に訪れたことのある地域です。

 映画の登場人物たちと異なり、背景にある土地や風景は自ら語ることはしません。「無言の土地は何も言わないが、それを語らしめるのが、地理学の役割である」と研究会の創設者である故・藤岡謙二郎元会長の言葉を、映画という舞台で甦らせました。映画の登場人物たちが直接語らない風景や情景から、制作者の意図、地理的意味を解みとこうというのがこの本の趣旨です。

 映画がはじめて制作されてからすでに100年以上たちました。その早い時期に、名優たちが活躍する舞台は、撮影所のセットから野外のロケ地へと飛び出しました。実在のロケ地が映画の撮られた時点と現状が大きく変貌しているのに驚かされることもあります。ストーリー設定の時代が古い映画も、復原を主たる方法とする歴史地理学の観点からみても非常に面白い対象となります。

 「はしがき」にも書かれていますように、「映画の土地の景観を読み解き、そこからその土地の地理的な諸問題を考える手がかりを得」て、見知らぬ土地へ興味をかきたてられる人は多いでしょう。最近のネットには映画のロケ地の写真や事物をあつめたサイトもいくつかありますし、フィルムツーリズムという新しい旅の形も生まれてきています。

 本書では古今東西の映画52本の舞台を、1映画4頁で解説しています。まず、冒頭で簡単なあらすじを紹介してから、その〈風景〉を会員自らが撮影した写真や地図、映画を読み解いています。学校での副教材としても使えるように、地理的な事象、地名をキーワードとして最初にあげ、文中には、統計や分布図・主題図も随所に盛り込んで、教育的な配慮もしました。アジア・アフリカ、ヨーロッパ、南北アメリカ・オセアニア、東北~中部日本、西南日本の5つのパートにわけ、この1冊で世界・日本の地誌や歴史地誌を学べる欲張った構成になっています。

 それにしても近頃の映画は元気です。2009年のアカデミー賞の外国語映画賞を受賞した「おくりびと」をはじめとして、地理学的な視点で見ても楽しめ、後世にも残る作品がめじろおしです。本書は映画館・シネコンへ行く際、自宅でDVDを鑑賞するとき、そしてロケ地を探訪する折の手引き書としても最適です。どうかふるって書店でご購入下さい。


-とりあげたシネマと章タイトル-

【アジア・アフリカ】
グエムル 漢江の怪物 ~公害の産物 ソウルに現る/胡同のひまわり ~激動に翻弄される北京の家族/山の郵便配達 ~「思い」を届ける郵便配達員/敦煌 ~オアシス都市の魅力/蒼き狼 地果て海尽きるまで ~モンゴル高原のヒーロー/インドシナ ~フランス植民地時代の記憶/ガンジー ~ガンジーが歩んだ道/アラビアのロレンス ~砂漠を愛したアラブの英雄/イングリッシュ・ペイシェント ~戦時にサハラの地図をつくる/ホテル・ルワンダ ~内陸国ルワンダの苦悩/遠い夜明け ~差別なき社会をめざして/Column 世界の『大空港』

【ヨーロッパ】
ブラス! ~イギリスの炭鉱町の人々/ダ・ヴィンチ・コード ~パリのルーヴル/ニュー・シネマ・パラダイス ~シチリア島の庶民/サウンド・オブ・ミュージック ~アルプスの風景と音楽/未完成交響楽 ~ドナウ川と中欧諸国/善き人のためのソナタ ~東西冷戦下のベルリン/オランダの光 ~水平線と地平線が織りなす国土/愛の風景 ~スウェーデンの古都ウプサーラ/おろしや国酔夢譚 ~大黒屋光太夫のシベリア横断/Column 007の冒険

【南北アメリカ・オセアニア】
1492 コロンブス ~新大陸の発見者/羊たちの沈黙 ~米国の首都ワシントン/ワイアット・アープ ~プレーリーの自然と農牧業/シェーン ~氷食地形と西部劇の舞台/アポカリプト ~マヤ文明とユカタン半島/フィツカラルド ~アマゾンの開発と現況/ハルとナツ 届かなかった手紙 ~ブラジル移民の軌跡/裸足の1500 マイル ~アボリジニのオーストラリア/ピアノ・レッスン ~入植初期のニュージーランド/戦艦バウンティ号の叛乱 ~南太平洋の人々/Column 不都合な真実

【東北~中部日本】
北の零年 ~士族による北海道開拓/鉄道員(ぽっぽや) ~産炭地域の盛衰/魚影の群れ ~巨大マグロに挑む/蝉しぐれ ~城下町の風景と武士の生活/キューポラのある街 ~地場産業のまち・川口の暮し/ALWAYS 三丁目の夕日 ~東京の下町/太陽の季節 ~太陽族を描いた湘南映画/蔵 ~米どころ新潟の地主制と酒づくり/あゝ野麦峠 ~日本の近代化を支えた製糸工女/氷壁 ~北アルプスの名峰・穂高岳/日本沈没 ~沈むのか? 日本列島/涙 ~戦後経済復興期の浜松の情景/Column 『男はつらいよ』

【西南日本】
古都 ~京都が育んだ産業の光と影/ブラック・レイン ~大阪が舞台のアメリカ映画/ありがとう ~震災と復興、神戸の町/夢千代日記 ~山陰の湯けむりの町/紀ノ川 ~近代を貫く大河/転校生 ~造船と映画のまち・尾道/UDON(ウドン) ~さぬきうどんと小麦/四万十川 ~日本一の清流/青春の門 ~変容する筑豊都市/涙そうそう ~沖縄の文化と観光


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